婦系図。
こんばんは。
台風の影響でお天気が不安定です。
東京の湿度はとても高く、それだけで体力が奪われます。
睡眠時間をしっかりとって週末に備えたいです。
さて、先日拝見した「九月新派特別公演」
市川月乃助改め 二代目喜多村緑郎襲名公演。
新橋演舞場は、猿之助襲名の地でもあり思い出深いです。
猿翁さんのもとで花開き、活躍をなさってきた月乃助さん。
私は段治郎時代、月乃助時代、少しの舞台しか拝見していません。
でも、その存在感と輝き、色気に、
ついつい目がいってしまう役者さんでした。
夜の部を楽しみました。
口上は前に書いたとおり、和気あいあいして温かい雰囲気。
客席にいらした獅童さんversionだったようです(笑)
獅童さん月乃助さん松也さんは「あらしのよるに」メンバー。
仲の良さがこちらまで伝わってきました。
お芝居は「婦系図(おんなけいず)」
泉鏡花の作品です。
恥ずかしながら、泉鏡花の本はキチンと読んだことがありません。
玉三郎さんが上演してくださった「海神別荘」「天守物語」で、
少し雰囲気を知ることができ、金沢旅行で記念館を訪れたくらい。
今回、全くお話の知識なく臨みました。
内容に触れますのでご注意を。
それでもすごく面白かったです!
緑郎さんにすごく華があり、いつもながら襲名とはすごいと思わされる。
緑郎さん演じる早瀬主税は、ドイツ語学者。
でも元はスリ。
学者の酒井先生お陰で立派な学者になりました。
酒井には妙子という娘がいます。
演じるのは、松也さんの妹 春本由香さん。
なんと初々しい!お声が透き通ってます!
面差しや声質が松也さんに似ていますね。
これからが楽しみです。
妙子の縁談話があり、
お相手の河野家が酒井家の系図を調べていることを知り、
早瀬は腹を立てて縁談を辞めさせようとします。
それが仇になり、早瀬は内緒で芸者のお蔦を妻にしていたことが
酒井に知れてしまう。
酒井は芸者という身分が許せず、別れるよう命じます。
「俺をとるのか、お蔦をとるのか」
という勢いで迫ります。
この緊迫した場面の緑郎さんに釘づけでした。
恩師か妻か。
緑郎さんの苦渋に満ちた表情がとてもよかった。
でもその後、湯島境内での別れ話をする時、
緑郎さんが薄情に見えて、妻のお蔦がとても切なかったです。
この場面は原作にはないそうですね。
新派劇ならでは。
名セリフもあり、当時、このお芝居がブレイクした要因の一つだそう。
蔦「嫌だ、初めてでも気がついたようにさ、
あなた今夜はよっぽどどうかしているのねぇ。」
早瀬「どうかもしようよ、月は晴れても心は闇だ」
有名なセリフとは知らなくても心に響きます。
緑郎さんの話し方は耳に体に心地よく、淀みがありません。
言葉もはっきりしているのですごく伝わる。
友人が「緑郎さんのセリフがミュージカルみたい」
と言っていたのが印象的でした。
お蔦は久里子さん。
とても可愛らしくて、お茶目で、一途。
醸し出す雰囲気に時代味があるから、タイムトリップさせてくれる。
緑郎さんとのカップル風情もぴったり。
瞬間、別れを受け入れてジワジワ納得していく様子がいじらしくて。
その後の運命も悲しかったです。
別れてから早瀬は静岡へ。
早瀬が助けたスリの万吉が書生となって、
一緒にドイツ語学校を開いています。
万吉は松也さん。
最初の早瀬との出会いがとても印象に残ります。
松也さんが登場すると風が吹きました。
で、やっとおもだか屋のお二人が登場します(笑)
妙子の縁談相手の河野家が登場。
早瀬は、系図を調べるような考え方への反発や、
お蔦と別れさせられたことへの復讐を河野家にします。
私、とってもびっくりしたのです。
早瀬は色悪なのですね。
元々スリですし、そういう出だからこそ。。ということでしょうか。
それまで、薄情だな。。と思ったくらいでしたが、
物凄く悪い人になる。
そして、緑郎さんがカッコいい。
啖呵を切る姿はまさに歌舞伎役者。
姿形も美しい。
それに復讐されてしまう猿弥さん春猿さん。
この場面が一番見応えあったと思うくらいドキドキしました。
緑郎×春猿、緑郎×猿弥
約30年間、猿翁さんのもとで修行を一緒に積んできた三人。
やはり胸に迫るものがあります。
ラストは、お蔦が危篤という知らせを受けて早瀬が向かう。
久里子さんがだんだんとやつれていく様子がすごい。
悲しさや時間の経過。。自然と受け入れられる。
幕が下りると、悲しい余韻に包まれ呆然としてしまった。
これから早瀬はどうなるのだろう。
そんなふうに考えました。
でも早瀬とお蔦が揃うシーンで幕が下りてよかったです。
二人の想いは本物だった。
それだけは、ほんのり温かい余韻でした。
公演は11日まで。
短い公演期間なので昼の部は行けず。
叶う方は是非、ご覧になってくださいませ。
緑郎さんが歌舞伎の舞台に出演してくださることを信じています。
新しい風。
これから新派も楽しみです。
有難うございました。
aya。
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