一條大蔵譚。
こんばんは。
一気に秋めいた東京です。
土日が無事に終了しました。
有難うございます。
巳之助さんにそっくりな新郎のパーティの司会をしました。
細身でオシャレでミュージシャンみたいな。
シャイな感じもトークショーで見た雰囲気そっくり。
私的にテンションがより上がりました。
そんな楽しみもある(笑)
さて、歌舞伎に浸りたい気分ですが、
なんとも時間がない日々を送っています。
歌舞伎座昼の部を観た中で、
今、一番心に残るのは「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」
吉右衛門さんの大蔵卿です。
大蔵卿は歌舞伎歴8年だけの私でも、
何度も拝見しているお芝居です。
今の吉右衛門さんの大蔵卿を観ることができて心からよかったと思いました。
吉右衛門さんの出の全てが衝撃的でした。
平家全盛の時代、大蔵卿は源氏の血縁で心の中では源氏復興を願っています。
ですが源氏は没落。
平家からの災いや疎まれることを避け、
生き延びるために「阿呆」を演じて、能狂言を楽しむ毎日です。
吉右衛門さんのお顔の可愛らしいこと!
このお顔が以前と雰囲気が全く違う。
前は、その天真爛漫な笑顔に笑ってしまったのですが、
あまりに自然過ぎてキュンとして悲しくなりました。
大蔵卿と同じ時代にいる感じ。
吉右衛門さんは、演じているというより、生きている。
今まで「桧垣の場」はずいぶん面白い印象でしたが、
今回はそうでなく、とにかくリアルに感じられ、
自分もその場の一人になったよう。
そして、吉右衛門さんの無邪気な笑顔で、
会場がほんわか温かく明るい雰囲気に。
こんなに重い話を、こんなにも軽やかにしてしまう。
源氏の忠臣 吉岡鬼次郎は菊之助さん。
妻 お京は梅枝さん。
この夫婦がまた素敵!
二人ともスキがない感じが似てる(笑)
それにすごい存在感でお芝居も重厚。
源氏復興への熱い想いが静かな中にも伝わってきます。
大蔵卿の妻 常盤御前は魁春さん。
常盤御前は、源義朝→平清盛→大蔵卿、
と生きる場を変え生き抜いてきた女性。
鬼次郎夫婦は、常盤御前の心が平家にあるのか源氏にあるのか、
その真意を確かめたいと思っています。
お京が女狂言師として大蔵卿に召し抱えてもらうことになり、
お京の手引きで鬼次郎も大蔵卿の屋敷へ。
夫婦は常盤御前に迫り、
夫婦の忠誠心に心打たれた常盤御前が源氏復興を願う本心を明かします。
魁春さんは凛として芯があり素敵でした。
世間で何と言われようが、女性としての強さに溢れていました。
夫婦の誤解が解けると、
それを裏で聞いていた八剣勘解由(やつるぎ かげゆ)が現れます。
勘解由は平家に内通しています。
勘解由は、吉之助改め吉之丞さん。
播磨屋の名跡を襲名、おめでとうございます。
聞くと、子役時代に吉右衛門さんの部屋子になったとか。
まわりの方に引けを取らない存在感です。
勘解由を奥から長刀で刺したのは、大蔵卿でした。
ここでは阿呆ではなく、キリッとできる男。
とってもキレのある人。
阿呆のフリをして世を欺いている本心を
明かす様子もカッコイイ。
「命長成、気も長成、ただ楽しみは狂言舞」
(長成は大蔵卿の名前です)
このセリフはいつも悲しい。
活躍できる器であってもそれができず、
阿呆のふりをしていなければ生きていけない。
源氏の血縁なので源氏復興を願っているけど、世は平家。
ただただ、阿呆になり能狂言を楽しむ孤独。
でも、言葉から大蔵卿の強さも感じます。
鬼次郎夫婦に想いを託し、
阿呆に戻る様子が寂しかったです。
現代に生きる私は幸せだと思いました。
本心をさらけ出し、その通りに生きられているわけではないけど、
それが時代に左右されることはないから。
観た後、もっと優しくなれるような気がしました。
「早く初代に近づけ」という神の声に追いかけられる。
吉右衛門さんは大蔵卿役について、TVでおっしゃっていました。
胸が締め付けられました。
秀山祭では初登場の「一条大蔵譚」
叶う方は是非観ていただきたいです。
楽しませていただきました。
有難うございます。
aya。
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