秀山祭 吉野川。
こんばんは。
朝晩すっかり秋の風です。
今日は歌舞伎座に行ってきました。
「秀山祭九月大歌舞伎」夜の部です。
久しぶりに三越でお弁当を購入。
升本のマクロビが私の定番なのですが’えん’も好き。
’えん’の秋刀魚やきのこ、銀杏が入ったお弁当にしました。
手作り感があって美味でした。840円也。
「らくだ」の途中で地震がありました。
震度3だったようですが、
し~んとした劇場内ではやたらと怖いものですね。
ずずずずっと、地鳴りを感じたと思ったらグラッと。
会場がどよめき、多くの人が同時に’地震!’と口にしました。
でも、舞台上の歌六さんと東蔵さんは演技したまま。
話には聞きますが、役者さんて本当にすごいです。
お陰で恐怖感がすぐに無くなり、お芝居の世界に入ることができました。
有難うございました。
さて、夜の部。
8月の納涼歌舞伎を考えると、
歌舞伎とはこれほどまでに幅広く深いのかと感動します。
秀山祭は昼夜ともに季節の深まりと同時に、グッと秋モード。
染五郎さんの役幅が先月から計り知れないのに驚きました。
権三と助十、弥次喜多に続き、
今月は荒事に時代物、世話物と三役それぞれ。
「吉野川」の久我之助の麗しいこと!
次の「らくだ」のちょっととぼけた久六で登場した時はどよめいた(笑)
私も笑ってしまった。
菊之助さんもそう。
昼の’塩梅よしのお勘実は呉羽の内侍’のお茶目で美しい姿、
鬼次郎の凛々しさ、
夜の「吉野川」の雛鳥の赤姫姿。
久しぶりの赤姫にノックアウトです(笑)
染五郎さんと菊之助さんのこのふり幅のすごさ。
私は昼夜通して、ここに一番感動してます。
猿之助さんも含め(ここ重要 笑)この年代の方たちは、すさまじい。
どのお役を与えられても、心憎いほど違う印象でやってくる。
毎回、舞台を観て裏切られる。良い意味で。
だから足を運んでしまう。
歌舞伎ってすごい。
そして、舞台美術の素晴らしさに改めて感動しました。
話に聞いていた「吉野川」
吉右衛門さん玉三郎さんが14年ぶりに務める注目のお芝居です。
舞台中央、後方から客席へ脈々と流れる吉野川。
そのブルーが鮮やかで、清らかで。。
どなたかが劇評でおっしゃっていましたが、
一階席中央のお客は水の底から静かに物語を見つめているよう。
三階にいる私は、小高い山の上から両岸の様子を
見守るような感覚になりました。
両サイドに義太夫さん方がいらっしゃる。
それぞれ両家を語る葵太夫と愛太夫。
掛け合いで聞けるなんて夢のようでした。
★内容に触れますのでご注意を。
染五郎さん演じる久我之助と、
菊之助さん演じる雛鳥は相思相愛。
しかし、親が不仲のため会うことが叶いません。
ロミオ&ジュリエットのようなお話。
川を挟んで両家があります。
様々なやり取りがあるのですが、
川幅の分の距離がもどかしく、でもそこがとてもドラマティック。
梅枝さん萬太郎さんの腰元ペアがすっごくいい!
雛鳥を想う気持ちが伝わるし、
特に萬太郎さんがお茶目で可愛い(笑)
この明るさが後半をより悲しくさせます。
しばらく若手のシーンが続き、
いよいよという感じで両花道から、
久我之助の父、大判事役の吉右衛門さん、
雛鳥の母、定高役の玉三郎さん登場です。
こんな’出’があるのだ。。と鳥肌が立ちました。
三階だから少ししか見えないけど、
見えない時から’気’を感じました。
それまでとは空気を一変してしまう。
一人でもすごい方たちなのに、二人ですから。
大蔵卿で占められていた私の脳は速攻上書き。
この重厚感は、この三か月間歌舞伎座ではなかった。
久しぶりの感覚。
玉三郎さんは悲劇を予感させるような出で、
美しく、でも陰がある。
それまで華やかな場だったのに、何だか一気に沈んでいく。
皇位を狙う権力者の蘇我入鹿に、
久我之助を出仕させろと大判事は命じられ(久我之助は入鹿に恨まれている)、
雛鳥は美しさから、妾として差し出すよう定高は命じられます。
そして、できなければ子供たちの首を討て。。と。
実は仲が悪いフリをしている両家。
自分の子供を犠牲にして相手の子供を助けようと考えます。
ですが、想い合う甲斐なく、
両方の親は自分の子供を死なすことになります。
距離があるために意思疎通が難しく。
両家を隔てている川が恨めしくなります。
死んでしまったが、せめて首だけでも添わせてあげようと、
雛鳥の首を対岸の腹を切った久我之助の元へ流します。
大判事は二人に水盃をしてあげます。
そして、大判事も息子の首を落とします。
とっても悲しいお話。
説得力がありリアルに感じるのは、
吉右衛門さん玉三郎さん、染五郎さん菊之助さん方の力。
でも、清らかな余韻が残るのは、
とうとうと流れる吉野川のせいかもしれません。
川の音が絶えず聞こえるよう。
時には静かに、時には早く。。
生命を感じました。
すごいお芝居を観てしまった。
約2時間が心地よく感じ、思うよりあっという間でした。
緊張感と集中力に感動です。
有難うございました。
aya。
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