修禅寺物語

こんばんは。


今週末から司会があり、本格的な準備が始まりました。

お盆明けの仕事から気分的には秋のシーズンがスタートです。



「温かき湯の湧くところ、温かき人の情けも湧く。

恋を失いし頼家は、ここに新しき恋を得て、心の痛みもようやく癒えた」


この台詞が大好きです。

勘九郎さんの優しい響きが今も耳に残っています。


納涼歌舞伎第二部の岡本綺堂作「修禅寺物語」


主人公の夜叉王を演じる彌十郎さんの

父、初世坂東好太郎三十七回忌、

兄、二世坂東吉弥十三回忌の追善狂言です。


あるインタビューで彌十郎さんは、

お父様が演じた夜叉王を忘れられない。。。と。

そして、初世猿翁が演じた夜叉王のビデオや、

現猿翁さんが下田五郎役を颯爽と演じるのを観た感動を話しています。


今月は彌十郎さんの申し出を受け、

猿翁さんが監修をなさっています。


彌十郎さんはこの演目に初出演で初役です。


姉娘、桂は猿之助さん。

猿之助さんも初役のはず。


妹娘、楓を彌十郎さんの息子さん新悟さん。

夜叉王の弟子で楓の夫、春彦を巳之助さん。


源頼家を勘九郎さん。

頼家家臣の下田五郎を萬太郎さん。


頼家の暗殺を狙う金窪兵衛を片岡亀蔵さん。

頼家が幽閉されている修禅寺の僧を秀調さんです。


面作りの名人、夜叉王は、

頼家から自分の面を作ってほしいと依頼されます。


鎌倉幕府二代将軍の頼家は、

実権を握りたい北条氏らの争いに巻き込まれ修禅寺に幽閉されています。


幕開きの緊張感がお芝居の空気を作ったように思います。

姉妹と春彦のシーン。


猿之助さんの桂は現状の暮らしに我慢できず、

身分の高い男性に嫁ぐことを夢見ています。


言葉の力強さが桂の心の強さに重なり、

いきなり物語が展開していく感じで引き込まれました。


妹は父の弟子を夫として、現状の暮らしの中にいます。

妹夫婦にケンカを売っているようだけど桂の純情を感じます。

巳之助さんも負けずに反撃します。


新悟さん巳之助さんの爽やかさに癒されます。


夜叉王が止めに入り、彌十郎さんの登場です。

初役ですか!

勘三郎さんが彌十郎さんに似合う、と言ったそうですが、

きっと誰もが思うと思います。


優しい、でも一筋縄ではいかない雰囲気。


そこへ頼家の勘九郎さんがやってきて、面の催促をします。

実は打っても打っても満足できず渡せる面がありません。


勘九郎さんは品があり美少年。史実では23才。

柔らかな雰囲気ですっごく素敵です。

ちなみに猿之助さんの桂は20才ね(笑)


怒る頼家に、楓が面の一つを差し出すと満足します。

そして、桂を見初めてお持ち帰り(笑)

桂の夢が叶います。


そして、桂川のほとりで二人きり。

心身ともに疲れ果てていた頼家は、人の心に癒されるのです。


「温かき湯の湧くところ、温かき人の情けも湧く」


私は20代前半に伊豆方面の温泉地の旅館で働いていました。

この演目を見ると当時を想います。


頼家と比べものにはなりませんが、

辛いことは人の温かさに救われました。

個人的に胸に迫るものがあります。


勘九郎さんと猿之助さんの雰囲気の良いこと!

こちらが恥ずかしくなるくらい(笑)


団子売でのいちゃいちゃとはまた違い、

しっとりして大自然の風景が見えるようです。


ですが、その場を金窪兵衛に見られて、

それがきっかけで夜討ちをかけられます。


頼家の家来、萬太郎さんの立ち廻りがカッコいいです。

骨太で見応えあります。

千穐楽に向けて進化しそう。


修禅寺が夜討ちをされ、

桂は頼家の面を付けて身代わりをしながら

夜叉王のもとへ戻ってきます。


花道から手負い姿でやってくる猿之助さんの切ないこと。


夢を叶えたから死んでも満足。

なんて芯の強い女性なのだろう。


そして頼家が討たれた報告が入ると夜叉王は気がつきます。

何度となく面を打っても死相が現れたのは、

自分の技術の未熟さではなく、その逆。


頼家の運命をを自然と面にすることができる

自分の技の極みと喜びます。


そして、桂の断末魔の表情を手本として残しておこうと筆をとります。


桂はそんなエキセントリックな父に自然と呼応するように見えました。


似た者同士でもあるし、

面作りの田舎暮らしが嫌だと言っていたのに、

父の気質を一番理解しているのだとも思いました。

親子なのだと。


猿之助さんが死顔を必死に夜叉王に見せようとする様子に

涙がこぼれました。


彌十郎さんのラストの演技が怖かったです。

風情ある土地での緊迫感が何とも言えずよかったです。

また観たい。


初日とは思えませんでした。

次回が楽しみです。


有難うございます。



aya。


aya's lounge

歌舞伎に出合って 何だか人生変わりました。

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