勧進帳@木ノ下歌舞伎

こんばんは。

三月がスタートです。

今日は木ノ下歌舞伎を観てきました。

KAAT神奈川芸術劇場です。

先日の杉原邦生さんのトークショーで、

歌舞伎を現代劇にしたらどうなるのかと興味が湧きました。

木ノ下歌舞伎は、歌舞伎役者が演じた舞台の

完コピをお稽古に取り入れるのだそう。

私は失礼ながら木ノ下歌舞伎には全く興味がありませんでした。

少し前までは、現代劇の役者さんが歌舞伎をすることに抵抗がありました。

それは中車さんが私の心を変えてくれました。

でも、あの香川照之だからできるのだ。。というのが大きい(笑)

今回、私が知らない方たちが演じています。

「勧進帳」は歌舞伎で何度も観ているし、観たばかりだし(笑)

何の前情報も入れずに臨みました。

始まり。。。ちょっと受け入れられないかも。。と。

それが後半、泣いていました。

何だか悔しい(笑)

★内容に触れますので、これからご覧になる方はご注意を。

会場中央に横長の舞台。

その両側に客席がありました。

歌舞伎座で言うと。。

花道が舞台とすると花横と花外の席がそれぞれ花道に向いている感じ。

二つの客席ブロックが対面していました。

衣装は全員黒で、ハイキングするような軽装。

義経以外はスニーカーでした。

まず驚いたのが弁慶が外国の方でした。

外国の方なまりの日本語。

團十郎さんが。。白鸚さんが。。。

もうこれはついていけないかも。。。

義経は見るからに女優さんなのだけど、

すごく声が低い。。。。

後で知りましたがニューハーフの女優さんでした。

極めつけが富樫。

前髪パッツンの若者で煙草吸ってた！

よくしゃべりエキセントリック。

視覚的なことと、気持ちを表すセリフの多さで、

まず驚いてうろたえてしまった。

私の想う勧進帳が。。。。。

拒否反応を本気で起こしそうになったのに、

それがだんだんと快感になる不思議(笑)

私が惹き込まれた要因は、

役者さん方の表情と言葉での感情表現でした。

歌舞伎では弁慶と富樫以外はほぼセリフはありません。

四天王や富樫の家来たちがしゃべり倒していることが新鮮(笑)

富樫だって物凄く冗舌(笑)

それに全員の表情が新鮮でびっくり。

個人的にはこれが現代劇にした醍醐味の一つかもしれないと感じます。

歌舞伎の化粧をしていないその表情は、

言葉以上に語っていました。

弁慶の満面の笑み、

義経の帽子の下の表情豊かなこと(前列だったのでよく見えました)、

四天王たちがハラハラしたり、ケンカしたりする顔が新鮮。

そして、何より富樫の心を表す表情。

義経一行だと気づいていながら見逃し関を通すのですが、

歌舞伎では、富樫の男気みたいなものとか、

その後はどうなっちゃうのかとか、

少ない動きの中から溢れてくるものに感動し妄想するのです。

それが、風貌が全く違う役者さんなのに、

酒盛りの場面も現代風なのに、

同じものを感じて、涙が溢れました。

義経たちがわちゃわちゃ楽しんでいる様子を

切ない笑顔で見つめているのに泣けた。

弁慶が四天王を制するのも泣けました。

外国の方でも弁慶に見えてくる。

ラストの場面が富樫で終わるのもなるほどでした。

ふっと歌舞伎を思わせる所作もあり、

歌舞伎を知っている面白さがありました。

それに、山伏問答は現代語になるとこうなるんだと感動！

もっと鋭く緊張感あるほうが好きなのですが。。

その点は歌舞伎のほうが命がけに感じて好きです。

義経が弁慶に手を差し伸べるシーンは、

何となく腑に落ちなかったのは何故だろう。

私の中で、あの義経の行為はとても神聖なのです。

でもこうしてあれこれ考えてしまうのは、

結局のところ面白かったのです(笑)

勧進帳を歌舞伎で観ていないという方が観たらどう思うのかな。

江戸時代にお客が感じたワクワクと同じ感覚になるのかもしれない。

私は歌舞伎ファンとして楽しませていただいた。

泣けてしまったのは、ちょっと悔しい。

役者さんだけでなく、空間作りにもやられた感。

音と光が役者さん方の’間’にぴったりで、

何度も心にグッときました。

BGMで和の音は確か一つもなかったのに。

歌舞伎役者が歌舞伎の技法で演じるものが歌舞伎。

そう漠然と思ってきたけど、それだけではないのかも。

私は知らずにボーダーラインを作っていたのかもしれない。

歌舞伎をもっと広い心で観ることができそうです。

アフタートークは聞かず余韻を楽しみました。

もっといろんな演目を木ノ下歌舞伎で観てみたいです。

有難うございました。

aya。