滝の白糸@歌舞伎座

こんばんは。


花粉症が辛い日々が続いています。


今日はとても感動した「滝の白糸」のお話。


★内容に触れますのでご注意を。




私は泉鏡花の作品にほぼ興味がなく。。

作品に触れるのは、玉三郎さんが演じて上演なさる時だけです。


金沢は数日滞在したことがあり、

泉鏡花記念館には行ったことがあります。

その独特な雰囲気は忘れません。


恥ずかしながら今回のお話もよく知りませんでした。

知っていたのは’水芸’のシーンがあることくらいです。


せっかくなのであらすじ等を見ずに臨みました。


主役の’水芸一座の太夫 滝の白糸’は

壱太郎さんが演じています。


壱太郎さん、すごい!

歌舞伎座で初主演ですが、見事な存在感でした。

華もあり、可愛らしくて、愛嬌があって。


演出をなさった玉三郎さんは5回演じているそうです。

きっと玉三郎さんとは違うタイプなのかな。。と想像します。


壱太郎さんは、

恋に落ちたキラキラした高揚感溢れる前半、

深く恋に落ちて陰が差し、憂いが漂う後半、

心の動きがとても自然で説得力があり惹き込まれました。


熱演が、白糸の恋の一途さに重なり、

どんどん切なくなっていきました。


玉三郎さんの白糸を観たことがないのに、

ふと、玉三郎さんを彷彿とさせる

表情や佇まい、セリフ回しを感じました。


運命的な出会いで恋に落ちる相手、村越欣弥は松也さん。

法律を学びたいがお金がないことで諦めようとしている欣弥に、

白糸は学費を仕送りすることを申し出ます。


この場面の白糸がいじらしい。

好きです。。とは言えず、

援助したいと心から話す様子がもうラブシーン。


欣弥にもその心が伝わっているから、

申し出を受けるのですよね。

立派になって帰ってくる。。


重ねる手に泣きそうでした。


そして3年間、芸で稼いだお金を仕送りし続けます。

でも時代とともに芸の人気に影が差します。

仕送りするお金を身を売って作らなければならなくなります。


そうして手に入れたお金を、

ライバルの一座に夜道を襲われ奪われてしまいます。

錯乱した白糸は、その後、人を殺めてお金を盗んでしまう。


ライバル一座が捕まりますが、

白糸からお金を盗んだことは認めても殺人はもちろん認めません。

そこで白糸が法廷に呼ばれて証言をすることになります。


検事席には金沢に戻った欣弥がいました。


壱太郎さんは客席に背中を向けて、

松也さんは客席を向いて演技をします。


お金を盗まれていないのだから、人も殺していない。

関係ない。。

白糸は欣弥の前で嘘をつきキッパリ言い放ちます。


認めれば欣弥との関係を話さなくてはならず、

欣弥に迷惑がかかるのを恐れて絶対に認めません。


壱太郎さんの背中からは、

その苦しみと決意を感じます。


でも欣弥は、自分をかばって嘘をついていることを見抜き、

裁判のラスト、白糸に血をはくように想いを語ります。

真実の大事さ。


それを聞いている時、

壱太郎さんの背中はどんどん小さくなり、震えて、

本来の白糸が現れてくるように見えました。


欣弥が全てを悟っているのだとわかり、

真実を話してほしいという気持ちを知るのです。


白糸と欣弥の心が繋がる瞬間でした。


そして白糸は自白します。


その直後、二人は別々の場所で同時に自害するのです。


松也さんの語りに、

壱太郎さんの背中に、

涙が止まりませんでした。


思いもよらず自害した時は、えー!と思ったけど、

二人の熱演が自然な成り行きに感じさせてくれました。


出会ったばかりのシーンがフラッシュバックします。

気持ちがぶっつり切断されたような気持ちで切ない余韻です。


歌六さん吉弥さん秀調さん歌女之丞さん、

彦三郎さん坂東亀蔵さんなどなど演技派ばかり。

米吉さんはとても明るい存在で華がありました。


水芸を初めて生で観ました。

これって楽しいですね(笑)

仕掛けが全くわからなかったです。


壱太郎さんの新境地。

これを観たら「男の花道」も観たくなりました。


全体が瑞々しく感じたのは壱太郎さんの熱演があるからだなぁ。

観てよかったです。


楽しませていただきました。

有難うございました。




aya。





aya's lounge

歌舞伎に出合って 何だか人生変わりました。

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