切られの与三@コクーン歌舞伎2

こんばんは。


ワンピース歌舞伎は、あと5回です。

今月はワンピース歌舞伎、コクーン歌舞伎、歌舞伎座、

と全く色合いが違う三座を見比べることができました。


全部が歌舞伎なのだと感動します。

歌舞伎は懐が深いと心から思う。



さて、コクーン歌舞伎「切られの与三」の感想の続きです。


★内容に触れますのでご注意ください。




今回、観てみたいと思った理由の一つが、

補綴が木ノ下歌舞伎の木ノ下さんだったから。


補綴とは、お芝居の世界では台本の作成作業、

それも既存戯曲の再編集作業を意味するそうです。


ようは、歌舞伎で度々上演されてきた’切られ与三’の台本を

木ノ下さんが再編集して書くということです。


3月に初めて木ノ下歌舞伎を観てショッキングでした。

古典を現代の感覚で上演した「勧進帳」は嫌ではありませんでした。


七之助さんが切望して木ノ下さんの初参加が決まったそう。

何だかワクワクしていました。


一度しか見ていない木ノ下歌舞伎ですが、

見染の木更津の浜の場面で、

いきなりの軽快なジャズに「おおおっ!こうきたか!」と

音の入り方にまで木ノ下歌舞伎のテイストを感じました。


そもそもあの見染の場でジャズというのが耳慣れない(笑)

でも、与三郎とお富が恋に落ちるシーンがオシャレでかっこよかった。

羽織落しがジャズで観る日がくるとは。。


七之助さんと梅枝さんだったからなのか、

役者の力量なのか、

はたまたジャズの持つ力なのか。。。


その後、その軽快なメロディが何度も流れるのです。

切られ与三って軽快な話ではないのですよね(笑)


でも聞いているうちに、

ジャズこそが歌舞伎と現代を繋いでくれているように感じてきた。

だから与三郎もお富も、歌舞伎本公演で観るより共感できたのかも。


猿之助さんが言うように、

三味線って時代が特定されてしまう。

私も無意識に’その時代の話’と決めつけてしまう。


音楽が一つ変わるだけで、

時代が不明になり想像が広がっていく。

江戸時代かもしれないし、現代かもしれない、未来かも。


ワンピースがそうであるように、

’切られの与三’もそう感じました。


与三郎の江戸に帰りたい。。という言葉があっても、

江戸をいろんな言葉に置き換えて自分のこととして見ることができる。


そして、私はバルコニー席だったので、

役者さんが見切れて見えない場面でも、

音楽が語ってくれてシーンを感じることができました。


木ノ下さんの台本はとてもわかりやすかったです。

歌舞伎では上演されなくなった部分はすっと心に入りました。


ラストシーンが好きでした。

人は生かされ、そして生きることを命じられているのだなぁ。


ジャズの話に戻るのですが、

通常、歌舞伎でセリフを語る時は笛の音がします。

今回はそれがウッドベースだったりピアノだったりします。


歌舞伎役者さんってすごい!

どんな楽器にもイキを合わせるのですね。


梅枝さんのお富が語る場面のピアノがドラマティックでよかった。


梅枝さんは、弟の萬太郎さんとともにコクーン歌舞伎初参加です。

私には古典のイメージが強い梅枝さんがどう演じるのか楽しみでした。


ものすごい存在感!

とっても古風で立ち姿が美しい。

女方ってこんなにも存在だけで感動するのだと改めて思いました。


与三郎はいろんなことが変化していくけど、

お富は変わらない。

三幕の梅枝さんの言葉でハッとしました。


自分では生きていけない。

男性に寄りかからないと立っていられないお富の性。

けっして根は悪い女性ではないと思う。

お富は生きるために強い。


でも、そのお富が与三郎に、

あんたは走っていける、と言う。


人間誰もが生き抜く強さを持っているのだと気づかされた。

与三郎も気がついたのでは?


梅枝さんの「また会いたいねぇ」は泣けた。

ボロボロ泣けた。


歌舞伎ではラストまで上演しないので、

与三郎とお富がどうなったのかいつも気になっていました。


結末は諸説あるらしいですが、

再会を繰り返し、それでも「会いたいねぇ」なのだと切なくなった。

そこに救いがありました。


その言葉がラストの七之助さんの表情に繋がるように思えました。

未来の目的ができた時、人はまた走り出せるような気がして。



萬太郎さん鶴松さんカップルは清涼剤ですし、

扇雀さんが登場すると場が締まります。


笹野さんの蝙蝠安は根っこからワルなのに、

三幕で与三郎の実家の番頭役?の時は泣かせるんだな。

亀蔵さん歌女之丞さんは安定感抜群で安心します。


私にはショッキングな与三郎。

とても刺激的で面白かったです。

取り留めもない感想だったので、

七之助さんの新たな魅力を多くの方に実際に体感してほしいです。


31日までシアターコクーンで上演しています。


楽しませていただきました。

有難うございました。




aya。




aya's lounge

歌舞伎に出合って 何だか人生変わりました。

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