切られの与三@コクーン歌舞伎 1
こんばんは。
お休みの今日は久しぶりのコクーン歌舞伎へ。
「切られの与三」を見てきました。
想像を超えた面白さでした。
私の好奇心を刺激され、何とも心にフィットしました。
★内容に触れますのでご注意ください。
初めてコクーン歌舞伎を観たのは2009年「桜姫」でした。
七之助さんが桜姫を演じ、その美しさに見惚れました。
以来、コクーン歌舞伎を拝見するのは4回目です。
勘九郎さんが不在で七之助さんが立役で主演です。
SNSなどの情報や感想は見ずに臨みました。
七之助さんの立役が素敵!!
与三郎は、記憶に新しいところだと幸四郎さん愛之助さんで観ています。
七之助さんのお富は観たことがあります。
新しい与三郎役者の誕生だと思いました。
私の七之助さんの今までの立役の印象は、
高貴であまり動きがない役のイメージです。
それがこんなにも着流しが似合い、
色気があり、甘え上手だけど品がある。。
だけど破滅的な繊細さを感じて危険な雰囲気も。。
大立廻りではダイナミック!
ばんばん見得もするし、
着物の裾がめくれて足があらわな姿も男の色気が!
お、男らしい。。← 当たり前なんだけど(笑)
たくさんの言葉がどんどん浮かんでくるほど、
新たな魅力に溢れているのです。
何よりびっくりしたのが声、言葉。
七之助さんって、
女方の時とそう大胆に声のトーンは変わらないと思います。
「ええ、ご新造さんぇ、おかみさんぇ、
お富さんぇ。いやさ、お富、久しぶりだなぁ。」
お富と再会してかける声にドキッとしました。
ここからの長台詞「しがねぇ恋の情が仇~」も
聞きほれてしまった。
一音一音を大事にはっきり伝えるように。
けっして歌わず、でも気持ちはのせて。
何だか新鮮。
与三郎が変化していく様子も見応えありました。
一幕では、家を勘当されて木更津に預けられています。
育ちがよくボンボン風情のいい男。
浜辺でお富とすれ違い、恋に落ちます。
二人の逢瀬の場面など、幸せ感満載。
でもお富はヤクザの親分の妾で元芸者。
見つかって天国から地獄。
お富の行方もわからず。
二幕では、親分たちに切られまくって傷だらけ。
乞食のようになり下がり、蝙蝠安と組んでヤクザな生活になります。
七之助さんの時間の経過の見せ方が秀逸。
ワルを重ねて人が変わりました。
押し入った先でお富と再会します。
お富の命を救った多左衛門は、
更生することを条件に与三郎にお金を渡し、
二人を一緒にさせてくれようとします。
でも与三郎は足を洗えず。。。
お富との暮らしが始まりますが、
ヤクザなことをして生活し続けます。
ダメ男の代表みたいな(笑)
それでもふとしたシーンで、
与三郎もお富も根は優しく良い人なのだと胸が苦しくなる。
どんどん落ちていく与三郎は捕まって島流しになります。
三幕は、島抜けをしてボロボロになって江戸に帰ってきます。
またお富と再会。
ですが追われる身。
立役として大立廻りをする七之助さんは初めて見ました。
キマル形が美しく、バンバン見得をして、また戦う。
客席の通路も使ってダイナミックに走り抜けます。
与三郎の「まだ生きなきゃいけないのか」という言葉。
体と声を振り絞り、魂が叫んでいるようで、ボロボロ泣けた。
中村屋兄弟を見て、
’勘三郎さんに似ている’という言葉を使いたくない私ですが、
立廻りの渾身の表情、魂の叫びを聞いて勘三郎さんと重なった。
とても似ていました。
最近のコクーン歌舞伎は実はあまり好みではなかったけど、
この心が震える感じは懐かしくて泣けました。
途中から不思議と与三郎に共感できました。
傷の話の時、人間だれしも多かれ少なかれ傷がある。。と。
目に見える傷が勲章だったり、目には見えない心の傷があったり。。
それでも命が続く限り生きなければならない。
笹野さんが繰り返す「生きてりゃこそ」
心に沁みた。
女方として一歩下がったイメージがあった七之助さんですが、
阿弖流為、マハーバーラタなどを経て、
こんなにも立役で花開くとは想像していませんでした。
賛否両論当たり前。
私は七之助さんを見て、これからがとても楽しみになりました。
ワクワクした余韻です。
コクーン初参加の梅枝さんがまたすっごくいいのです。
そのお話や、他の役者さん、演出、音楽の感想は次回に。
aya。
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