助六曲輪初花桜@歌舞伎座 2
こんばんは。
秋らしい陽気が続いています。
今月の歌舞伎は各座あと少しです。
週末には南座新開場記念のお練りや開場式が行われます。
もう冬がやってきそうな勢いです。
さて、前回のお話の続きです。
歌舞伎座夜の部「助六曲輪初花桜」
助六の仁左衛門さんが登場してからは、
次々と面白いキャラクターが現れます。
揚巻にご執心だけどフラれてばかりの意休は歌六さん。
助六のモテっぷりも気に入りません。
助六も、意休が執拗に揚巻を想っていることが気に入らず、
さらに持っている刀を確かめたくて懸命に挑発をします。
でも意休は怒っても刀を抜きません。
そこに意休の子分、くわんぺら門兵衛の又五郎さんがやってきます。
吉原ではやはり嫌われ者。
花魁たちに相手にされず怒っています。
反対からやってきた、うどん屋福山のかつぎがぶつかってしまう。
かつぎは仁左衛門さんの孫、千之助さん。
威勢がよくて粋!セリフまわしがいい!爽やか(笑)
江戸っ子か?と思うほど。
ますます怒り心頭の門兵衛ですが、
かつぎの代わりに助六が喧嘩を買い、門兵衛を負かしてしまいます。
ここでの助六の名乗りがカッコいい。
セリフの妙。流れるような言葉、息の使い方。
ものすごいものを聞いてしまった。
門兵衛の奴、朝顔仙平は巳之助さん。
江戸時代、朝顔煎餅というお煎餅が人気だったそう。
それが名前の由来です。
’煎餅づくし’のセリフがあり面白いです。
巳之助さんは、今では「勘三郎せんべい」と
セリフに入れ込んでいるようです。
実際に勘三郎さん所縁のお煎餅を販売しているお店が神楽坂にあります。
さすが巳之助さんです。
巳之助さんが道化役だと、
身体能力の高さや踊りの巧みさ、声の良さが引き立って素敵。
すごく安定感があり、場を和ませます。
ひと騒ぎして助六一人になると、
花道には白酒売新兵衛、勘九郎さんが。
実は助六の兄。
曽我兄弟の十郎と同じ和事師の設定。
おっとり、なよっとしたキャラクターです。
仁左衛門さんが弟!というのは置いておいて、
勘九郎さんが兄弟役ということに感動します。
二人並んで演じる姿は、それだけで胸がいっぱいになります。
ケンカばかりしている弟に注意しに来たのですが、
ケンカをふっかけているのは、
相手に刀を抜かせるためと知るのでした。
兄弟は父の敵と親の敵と源氏の宝刀を探しているのです。
そうと知って、兄が弟にケンカの仕方をレクチャーしてもらうことに。
柔らかい物腰で助六のマネをする勘九郎さんが楽しいです。
そして兄弟で通行人に股くぐりをさせて嫌がらせ(笑)
亀蔵さんが若衆艶之丞として登場してきてびっくり!
ここは田舎侍でしたよね?
勘三郎さん追善の特別趣向でしょうか。
若衆姿というだけでも面白い亀蔵さんです。
続いて被害にあうのは通人の彌十郎さん。
勘三郎さんの縁の深い二人が立て続けに登場するだけで泣けてくる。
遠慮なく勘三郎さんの名前を出してくるものだから号泣してしまった。
花道で勘三郎さんに語りかけるなんてずるいなぁ。
この姿が、同じ通人を演じた、
三津五郎さんに、勘三郎さんに重なる。
その日がついこの前のよう。
きっと。。
彌十郎さんの言葉は今月関わる全員の気持ち。
今にも勘三郎さんの返事が聞こえてくるようでした。
みんなの心に生きています。
大きな拍手で通人を送ると、
いよいよ玉三郎さんの登場です。
揚巻の七之助さんがお客を見送るため、一緒に登場。
お客は兄弟の母、満江でした。
笠を外し、玉三郎さんのお顔が見えると、
大きなどよめきと拍手が起きました。
吉野山の静御前とはまったく違う風情。
地味目な雰囲気ですが、それまでの空気を一新してしまいました。
仁左衛門さんから芯が玉三郎さんへ。
母には頭が上がらない兄弟(笑)
うろたえ方が面白い。
もうケンカはしないようにと助六に紙衣を贈ります。
そして去っていく。。
ほんの短い時間なのに濃密。
贅沢な瞬間でした。
意休が揚巻を追いかけてやってきます。
またもや助六と一触即発になります。
でも、揚巻を巡っては恋敵ですが、
実は意休は、助六の正体や父の敵討ちのことを知っていて、
そのことは応援しているのでした。
ケンカばかりしていないで、
兄弟で敵討ちをしなさい、
と刀を抜いて香炉を斬ってわざと刀を見せます。
それは助六たちが探している刀でした。
一気に頭に血が上った助六を揚巻が引き留め、
ここで幕になります。
仁左衛門さんと七之助さんの二人の形が美しく、
とにかくストーリーより絵面にノックアウトされました。
約2時間があっという間。
場面転換が一度もないのですよ(笑)
登場人物が多く、
次から次へと役者さんが新たな風を運んでくる。
チーム感があるというか、
気持ちが一つになって伝わってくるというか。。
勘三郎さんの追善だからでしょうか。
助六を通じて、役者さん裏方さん、お客さん。。
それぞれが偲んでいる空気感をひしひし感じました。
あったかい気持ちになれました。
有難うございました。
aya。
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