芝翫型。

こんばんは。


今、東京の私が住む地域では物凄く強い風が吹いています。


猿之助さんが道中のblogをアップしてくださっていて嬉しいです。

一緒に旅をしている気分。

それにしてもアクティブ過ぎないですか?

でもそれが猿之助さん(笑)旅を満喫しているようです。


さて、歌舞伎座では襲名公演真っ最中。


祝い幕が力強くて素敵です。

佐藤可士和さんデザインの斬新な幕。

今にも動き出しそうな躍動感ある筆使いです。

祝い幕を見ながら食べるお弁当はすっごく美味しい(笑)


夜の部は全て拝見したことがある演目です。

しかし「熊谷陣屋」はずっと’團十郎型’と言われるものを観てきました。

今回は’芝翫型’


四代目歌右衛門から受け継がれ、四代目芝翫が完成させた型です。

芝居小屋の客がわっさわっさうるさかった江戸時代。

お客に注目してもらうために見得も附けも大きく入り、

どっぷり古典の風合い。

お衣装やお顔の色も派手なのはそのせい?なんて思いました。


團十郎型は、七代目團十郎から九代目に受け継がれ完成した型。

従来の芝翫型より、熊谷直実がもっとクローズアップするよう、

そして時代感覚に添ったものにしようと進化したものとか。


今では上演されるのはほぼ團十郎型です。

調べると、芝翫型は戦後2度ほど上演されましたが、

しばらく途絶えてしまい、新芝翫さんが復活上演してきたそうです。

新芝翫さんは今回で確か5回目です。


私は初めて芝翫型を見て、まずそのビジュアルにびっくりしました。

チラシよりも際立つ真っ赤なお顔。

金ぴかのお衣装。

浄瑠璃人形のような、無機質な側面も感じました。


新芝翫さんがひと際大きく見えて、お声も張りがあり迫力満点。

でもあの姿が見慣れないとストーリーに入っていけない(笑)

目がチカチカ。


でも慣れるとクセになってくるから面白い。

新芝翫さんのオーバーなまでの動きが、

熊谷直実の心の強さに繋がってくる。


自分の子を身代わりに討ってきたという

尋常ではない狂気じみた哀しみが伝わります。


桜の木の前にある制札(注意書きの札)の文、

「一枝を切らば一指を切るべし」


熊谷の主人 義経から送られたもの。

’いっし’は一子にかけてあり、

「平家の子 敦盛を我が子を犠牲にして助けよ」という謎かけ。


敦盛は後白河法皇の子であることを知った義経は、

敵方だけど助けたかったのです。

熊谷も敦盛の親に恩があります。


だから、熊谷は義経の意を汲み、

我が子の首を討って敦盛の身代わりにしたのです。


我が子の首を見て、驚く熊谷の妻 相模は魁春さん。

敦盛の母 藤の方は菊之助さん。


魁春さんは控えめな中に母としてのたっぷりな愛情を、

菊之助さんは母の愛情をストレートにぶつける。

二人の母にとても心打たれました。


首を見て驚く母二人を制札で制する熊谷。

聞くところによると、女性たちに制札の文を見せるため、

芝翫型では制札を逆さにしないのだそう。


團十郎型では逆さにして、

女性たちを遠ざけるためのアクションというイメージ。

新芝翫さんの「制札の見得」がダイナミックで素敵でした。


義経役は吉右衛門さん。

登場すると空気が変わり、やはり圧巻です。

だんだんと温かさがにじんでみえました。


後ろに控える4人は歌昇さん右近くん新福之助くん新歌之助くん。

座っている時間が長いけど、凛々しくて目がいきました。


平家方の弥陀六は歌六さん。

義経の恩人です。

通りがかり、義経に正体がわかってしまいます。

平家の没落は自分の責任もある。。と嘆きます。

言葉に時代味があり、聞いているだけでジンとします。


ラスト、熊谷は出家を願い出ます。

ここでびっくり!

坊主頭ではないのですね。


團十郎型は、坊主頭の熊谷が一人で花道を引っ込みます。

「十六年は一昔、夢だ。夢だ。」有名なセリフと三味線の音色。


芝翫型はこれが全然ないのです!

花道にも行かず、登場人物が舞台上に大勢いる中、幕。


しかも髷だけなくて、両サイドの髪はあるのです。

そして、一人ではなく妻の相模と一緒に出家する。


すごい違いでした。


花道の引っ込みがないとちょっと寂しい気がしたけど、

後から考えるとストーリーとしては納得したような。

特に女性目線からすると納得かも。

妻を一人おいて行かれるより嬉しい(笑)


熊谷のラストがとても身近な人物というか、

子供を想う当たり前の親に見えました。

義経のほうがエライ人なのだから、

吉右衛門さんがデンとしていてしっくりきたと言えばきた。。


團十郎型は男のロマンなのだと思いました。

熊谷がスーパーな人に見える(笑)

女房を振り切って一人旅立つ姿はカッコよく見えるし。

時代的にも合っているのかもしれない。

ドラマティック。


あぁ。。すぐに團十郎型が観たくなりました。

見比べてみたい。


新芝翫さんは、芝翫型が似合うと思いました。

猿之助さんは團十郎型のほうが似合うかな。。(笑)

いろんな役者さんで芝翫型も上演されると楽しそう。



私は、演じるなら團十郎型、共感できるのは芝翫型。

歌舞伎役者でもないのに大胆発言ですが(笑)


息子さんたちもしっかり側で観ていますので、

受け継いでいってほしいお芝居です。


二つの型を知ることができ楽しみが増えました。

有難うございました。



aya。

aya's lounge

歌舞伎に出合って 何だか人生変わりました。

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