瞼の母@歌舞伎座

こんばんは。


今日から仕事がラストスパートです。

今週末まで司会があるので頑張ります。


さて、歌舞伎座 第三部「瞼の母」のお話です。


「これは僕の実人生そのもの。何も役を作る必要がありません」

先月のインタビューで中車さんは言いました。


長谷川伸さんの作品で、

長谷川さん自身の体験がもとになっています。


番場の忠太郎は、5才の時に母が家を出ていってしまう。

そして12才で父が他界。

独りになった忠太郎は渡世人(やくざ)になりました。


30才になる頃、母を探そうと江戸にやってきます。

母が貧しい生活をしていたら。。と考え、

博打で稼いだ百両を持ち続けています。


そして、縁があり母 おはまを見つけます。

おはまは立派な料理屋の女将でした。


実は、おはまは忠太郎は病いで死んだと聞かされていました。

なのに急に目の前に息子が現れ動揺します。


すぐに息子と解りますが、

渡世人になった姿を見て、邪推してしまう。

我が子とは認めず追い返してしまう。


中車さんのお芝居には泣かされました。

中車さんは25才の時、父である猿翁さんに初めて会いました。


思い立って巡業先に花束を持って訪ねると、

「お前は息子じゃない、帰りなさい」と言われたそうです。

以来、歌舞伎界に入るまで会うことはありませんでした。


だから「僕の実人生そのもの」なのです。


おはまと感動の再会を想像していたのかもしれません。


息子ではない、と言われ、

それまで少しドライな印象の忠太郎が一転、

感情を吐き出し絶望している様が痛かった。


中車さんは父の前で、

こんなふうに泣いて叫びたかったのだろうか。。

と想像しただけで心が痛かった。

どんなに逢える日を夢みていたことか。


認めようとしない玉三郎さんからも

すごく愛情を感じました。


理屈ではなく、愛情は湧いてくるのだなぁ。

それでも現在の自分の環境を思うと素直に抱きしめてあげられない。


忠太郎とおはまの座っている距離が、

縮まることはありませんでした。


おはまには娘 お登世がいました。

忠太郎の妹になります。


忠太郎を追い返したことを知ったお登世は、

おはまの心を改めさせて忠太郎を探します。


お登世の梅枝さんは純粋で天使のよう。

どんな生活をしていても兄は兄。

家に迎え入れよう。。と。


でも忠太郎は見つかりません。

帰るおはまとお登世の後姿を見送る忠太郎。


深々と二人に一礼します。

その姿にまた涙。


喧嘩別れになったようでも、

母を慕う気持ちは変わらない。


じっと二人の方を見ている姿は未練ではなく、

気持ちに一区切りついた安堵のようなものを感じました。


ただ会いたかった。

会ったらどうなろう。。

そういうことではなく会いたかった。


幼い頃のおぼろげな瞼の母ではなく、

しっかりと母を目に焼き付け、

今日からは目を閉じれば本当の母の姿が浮かびます。


それだけで十分だったのかもしれない。。

そんなふうに思う中車さんの忠太郎でした。



出演者の皆様が達者で、

お芝居自体がとても見ごたえあって面白かったです。


幕開きに登場する、萬次郎母、息子彦三郎、妹児太郎家族が泣ける。

それぞれを想う心が温かい。


歌女之丞さんの夜鷹がまたいい!

中車さんとガッツリお芝居しています。


坂東亀蔵さんの板前さんもキリッとしていてカッコいい。

喜猿さんはお声ですぐにわかる。

笑野さん芝のぶさんコンビも華やか。



何より、中車さんが演じるからこその「瞼の母」

勘三郎さんが演じてきたと聞きましたが、

きっと違った風合いになっているのだと想像します。


父の猿翁さんが演じた記録を勉強したそうです。

ラスト、見送る姿で幕が閉まるのは猿翁さんのやり方だそう。

勘三郎さんは後方に走っていったとか。


当たり役になる予感。

また上演してくださる時を楽しみにしています。


おはま役を猿之助さんでも観てみたいです。


有難うございました。




aya。

aya's lounge

歌舞伎に出合って 何だか人生変わりました。

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