月光露針路日本 2
歌舞伎座「六月大歌舞伎」
千穐楽おめでとうございます。
無事に幕が下りてよかった。
夜の部の三谷かぶき「月光露針路日本 風雲児たち」
再演か、続編か。。
また三谷さんに歌舞伎座に戻ってきてほしい。
こんなに役者さん一人一人が輝いていた歌舞伎は
久しぶりかもしれない。
全員がニンであったし、
クローズアップもされ、丁寧に描かれていました。
全員が25日間、進化し続けたのではないでしょうか。
種之助くんは、2回目に観た時にびっくりしました。
何かが吹っ切れたかのようでした。
どんどんリラックスしていき表情が生き生きして、
前楽は別人のように溶け込んでいました。
与惣松の作った料理を食べたいと思いましたもの(笑)
鶴松くんは真面目で器用な感じがとてもよく、
病気になった時の悔しさが切なかったです。
廣太郎くんのエンジニア的な空気感が好きでした。
松之助さんには毎回笑ってしまいました。
宗之助さんの偽医師風情もあっていたし、
千次郎さんの伊勢音頭は楽しかったです。
船上の全員がそれぞれで面白かったです。
なんと言っても三五郎の白鸚さんは近くで観たら、
ものすごくカッコよくて惚れそうでした(笑)
弘太郎さんが氷に飲み込まれる場面はハラハラしました。
スッポンが下がっていく中、演技をする巧。
さすがおもだか屋一門だと感動でした。
男女蔵さんの小市はサイコーでした。
表情がほぼ動かないのですね。すごい。
旅を面白がる様子に勇気をもらった。
彌十郎さんの九右衛門は可笑しかった。
生きたいという思いは健康に繋がるのだ(笑)
ラストは泣かされました。
そうそう一幕ラストの猿之助さん一人語りが、
講談のように思えたのは、
くるっと回って間を取るのが張扇を叩くのと同じように思えたからです。
舞台近くで観たら、異常に泣けてきた(笑)
この場面は初日と全く違う印象。
天邪鬼で憎まれ口ばかりの庄蔵が、
現状の辛さを素直に爆発させます。
私の印象では、
初日あたりはもっと陽気さが立ったと思う。
でもだんだんと何かにとりつかれたように、
たたみかけるような口調になっていきました。
猿之助という人は、ふざけているような演技から、
突然に人間の真理をついてくる。
可笑しいはずなのに涙がこぼれるのです。
三幕の別れのシーンのチュー(ロシア式別れの挨拶)もそう。
初日あたりはもう少し笑いが起きるような演技でした。
でも完全に笑いを消してきた。
光太夫の親愛の情に触れると心が揺らぐ庄蔵。
寂しくて寂しくて不安で怖くて。
残される者の真理をついてくる。
でも猿之助さんは冷静に違いないのです。
妄想ですが、これは計算ではなく、役者の本能。
お客を楽しませようという心がそうさせるのだと思う。
だから天才と言われる。
この演技を目の当たりにして心が動かないはずがないのです。
かたや幸四郎さん愛之助さんは、
ポロポロ本当に涙を流していました。
サンクトペテルブルグまで新蔵が追いかけてきたシーン。
庄蔵が洗礼を受け、自分も洗礼を受けたと告白をします。
光太夫は、新蔵が庄蔵のために洗礼を受けたと気づきます。
その瞬間、幸四郎さんの目には涙が浮かび、
みるみる溢れていき流れ落ちました。
すると、それを受けて愛之助さんも涙を流しました。
10年間、一緒に日本に帰ることだけを目標にきた仲間です。
それぞれが’申し訳ない’のか’感謝’なのか’悔しい’のか。。。。
本当に人生はわからない。
この日はこの場面が一番感動的でした。
私も涙が止まらなかった。
そこからポチョムキンが登場するまで、
二人は泣きながら芝居をしていました。
幸四郎さんの目が真っ赤だったのが印象的です。
三階からは気がつかなかった涙。
光太夫と新蔵が本当にそこにいるようなリアルな感じでした。
その後、エカテリーナに想いを爆発させるのが、
今までで一番自然に感じました。
何人も死なせ、生きているのに帰れない人も出てしまった。
死んでも魂は帰ってみせる、
という言葉にそれまでの旅がフラッシュバックしました。
そして、ラストシーンでこの日最大級の号泣。
光太夫と同じくらい磯吉が頼もしくなっていました。
言葉に力がみなぎり、大人になっていました。
息絶える小市に優しい嘘をつく。
船出の時には新蔵が発した優しい嘘。
磯吉が成長した証です。
染五郎くんがとても大きく見えました。
初日とは比べものにならないくらい。
お顔も違って見えた。
そう思っていたら全員が勢ぞろいして号泣。
皆の魂は一緒に帰ってきた。
一階席客席の上をいく青い幕。
初めて私の上を通り過ぎました。
波が押し寄せる感覚で、
何だか今まで夢を見ているような気分になりました。
通り過ぎたら現実に戻ってきたような。
たくさんの感動を有難うございます。
とっても楽しい6月でした。
またいつか。
aya。
0コメント